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春の咳

春の咳
毎年この時期になると、長咳の外来診察が急激に増えます。なかなか治らない空咳がほとんどです。
春先に多発する咳を伴う風邪を、中医学では『春温』と呼びます。温病の一種で、主な症状は、高熱を伴わない長引く空咳が夕方から夜にかけてよく出るというものです。
現代医学では、ウィルス性の感染と考えられています。
数年前の3月後半にサースウィルスの感染で学校閉鎖になったり、シンガポール全土が大騒ぎになったことは、まだ記憶に新しいと思います。
このように、さまざまなウィルスが春先に大発生することは、今も昔も変わりません。
疲れが溜まって体力が低下すると、それに伴って免疫力が弱り、ウィルスに感染されやすくなります。
春は学校や職場でも環境の変化が多く多忙になりがちな時期です。特に、初めての外国で一度も感染されていないウィルスを体内に呼び込むと抗体を作るのに時間がかかり、その上、環境の変化、ハードな仕事、睡眠不足が重なると発病しやすくなります。
中医学では、『五臓六腑皆令人咳』の医理で、咳の原因は肺だけの疾病ではなく、体の五臓六腑のいずれかひとつが弱ったら咳となる、という説があります。
中医が咳のある患者を診察するときは、下記にあげるように細かい問診や観察を行います。
それぞれを明察しなければ、『一発命中』の処方をすることはきわめて難しいとされています。
腰痛、咳時に小水漏れを伴う、“腎咳”(じんせき)
目まい、貧血、吐き気を伴う“肝咳”(かんせき)
動機、息切れを伴う“心咳”(しんせき)
夜になると咳がひどくなる“肺陰虚咳”(はいいんきょせき)などに分けられます。
中医治療は、明確な診断によって「証」を決めた後、数百種類の生薬の中から適切な薬を選び出し処方します。特別弱い体質の方を除いて、患者さんの多くは1週間の服用で症状に改善が見られ、2週間の服用で完治するケースが多いです。
日常生活における注意事項は、冷たい飲み物や食べ物を避けること、柑橘系の果物、スイカを食べないこと、また、朝晩、濃い塩水(飽和食塩水)で1分くらいかけて、丁寧にうがいを行うことで、さらに回復が早くなります。