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便秘

便秘
便秘にはいろいろな原因がありますが、現代の日本人に最近多いのは、精神的なストレスからくる便秘(気秘タイプ)です。なかには何年にもわたって、下剤の服用を繰り返している方も少なくありません。中国漢方の古典漢方には、「思えば、すなわち気が結する」という言い方があり、頭脳労働者や受験生などの持続的な思考作業は、気の流れを停滞させやすい。気滞(気の滞り)は、胃腸の蠕動運動を低下させて、便秘につながる。
また、気分が落ち込んだり、気分がすぐれないといった精神的“鬱”状態も胃腸の働きが低下して便秘となりやすい。反対に、イライラする、怒りっぽい、興奮しやすい人も、気が強く上に昇るため、やはり胃腸の蠕動運動に影響して便秘を引き起こしやすい。
「魄門(はくもん)(=肛門のこと)は五臓の使であり、水穀(飲食物)が長く留まることを嫌う」ともあり、そのために便秘になると、五臓にさまざまな影響が及ぶことになります。便秘の処方も患者さんの体質と症状によって異なってきます。

実証の便秘
麻子仁丸・・・(胃腸伏熱症)
便が硬い、腹が張る、口が渇く、口臭がある、イライラする、尿が少
く黄色、舌苔が黄色で乾いている。
六麿湯・・・(気滞症)
便があまり硬くない、便意があるが出にくい、排便後すっきりしない、
おならやげっぷがよく出る、腹・胸部が張る、食欲がない。
大黄附子湯・・・(胃腸寒積症)
便は硬くないが出しづらい、時々腹痛や吐き気がある、腹が張ってる、
手足が冷たい、舌苔が白く厚い。
虚証の便秘
潤腸丸・・・(虚血症便秘)
大便が乾いている、顔色が暗く艶がない、不眠、動悸、物忘れ、唇の血
色が薄い、舌苔が白く薄い、。
増液湯・・・(陰液不足症)
便がウサギのフン状、体が痩せている、目眩、耳鳴り、頬がリンゴのよ
うに紅い、眠りが浅い、イライラする、寝汗をかく、腰膝に力が入らな
い、舌苔がなく紅い。
済川煎・・・(陽虚症)(老人性便秘)
大便がやや硬い、排出困難、尿が透明で量が多い、顔色が白い、血色が紅
い、腰が冷える、腰痛、膝の無力感、舌が血色薄く、舌苔が薄白い。
補中益気丸・・・(気虚性便秘)
便が硬くない、便意があっても出にくい、排便無力感、排便後脱力感、
疲労感がひどい、舌苔が白く薄い

便秘薬の処方で特に気を付けなければならないことは、瀉下薬であるが故に、痩せてほてり感や体の乾燥感があるなど、陰虚(体液不足)タイプの人、例えば、加齢によって腸液や水分が不足気味の時に、下剤を使って無理に排便させると、腸液も一緒に消耗してしまう。その結果、腸管に潤いがなくなって、ますます排便が難しくなる。発汗や嘔吐によって、体液を多量に消耗している時には、特に慎重に処方しなければなりません。