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中医学の辨証論治法

中医学の辨証論治法について

『問診』
  • 間質性肺炎用問診票(2枚)・一般用問診票(2枚)・血液検査データ・胸部X線、CT、HRCTフィルム・電話による問診などから必要な情報を得る。特に自覚症状を正確につかむことが重要。
  • 中医学による四診(問診・聞診・望診・切診)を行う。(下記参照・ただし、診療所に来られた方のみ)
『辨証』
  • 「証」(病状・病勢や体質、陰陽のバランスの崩れ)を統合的に判断する。
  • 八綱辨証・臓腑辨証などさまざまな角度から的確な辨証をする。
『論治』
  • 中医医理、薬理、薬性を総合判断した上で治療方法、治療手順などを決める。
『処方』
  • 随証治療ではなく、『証(しょう)』に合致する生薬などを選び組み合わせ処方する。
  • 症状の変化、治療過程によってきめ細かく処方を変えていく。
  • 個々に日常生活の注意点もアドバイスする。
「問診(もんしん)」 一般的な病歴、自覚症状、主訴、こちらの質問にたいする答えを問診票を見ながら確認していく。
「聞診(ぶんしん)」 声の明瞭さ、声のはり、体臭、息など、聴覚と臭覚による情報収集。
「望診(ぼうしん)」 動作や容姿から眼光、顔色、皮膚の具合、舌の観察(舌診ぜっしん)など、視覚による情報収集。
「切診(せっしん)」 実際に体に触れ、脈を診る(脈診)、腹部を診る(腹診)など。
この四つを『四診(ししん)』といい、患者さんの『証(しょう)』を見定め、オーダーメイドの処方をします。
そこで、これまでの間質性肺炎(IIP)、肺線維症(IPF)の臨床経験を基に辨証論治法により4つの証に分類し下記に整理してみました。 注1)胸部X線、HRCT、CT、肺活量(VC)、酸素分圧差(PaO)、全肺気量(TLC)、残気量(RV)、肺拡散性(DLco)、血液検査値(KL-6・SP-A・SP-D・CRP)、赤沈などの検査、影像と数値も参考。
注2)下記にあげる4つの分類は、あくまでも代表的なパターンであり、実際は、混合型の方が多いといってもよいでしょう。 当然ながら、患者さん一人一人の諸症状や背景因子は十人十色で二人として同じ方はおられません。年齢、性別、背景因子、体質、病型、病勢、病歴、併発している病気、 生活スタイルなどに加えて、処方の基となる週ごとの「症状報告書」とお電話による問診、その時の気候や心的環境なども考慮しながら2週間ごとに処方を変えていきます。
よって、このパターンにはこの処方、といった固定処方はございません。

 

A・燥熱傷肺・肺陰虧損型

中医学的臨床所見: 時々、乾性咳が出る。痰は少ないが粘りが強く糸状で絡んで出にくい時に血絲が混じる稠痰が出る。のどが渇く。やせ型。咳声は低く、 かれ声。皮膚、頭髪の艶がない。便秘気味、尿の色が濃い。 舌体が赤く、唾液が少ない。舌苔が少ない、あるいは薄黄色。細数脈。
中医学的治療原則: 清肺熱、潤燥止咳、滋陰、潤肺生津。
主な用薬: 白茅根、石斛、蘆根、牛蒡子、魚腥草、蛤売草、西洋参、冬虫夏草、沙参、太子参、黄耆、桔梗、白朮、紫菀、款冬花、射干、天門冬、百部、陳皮、 麥門冬、桑白皮、生薏仁、紫蘇子、阿膠、亀板、玄参、杏仁、枇杷葉、白前、知母、スッポン油、スッポンエキスなど。

B・濁痰阻肺・気滞血瘀型

中医学的臨床所見: 咳、喘、痰の量が多く、痰は白色で粘って泡状。息切れ、息が短い。
汗をかきやすい、倦怠感、食欲不振、全身・頭が重い。イライラする、胸痛あり、口唇や爪が青白紫色を帯びている。舌からだの血色が薄いか赤暗い。舌下静脈が黒く太く張っている。舌苔は薄い、または厚く白色。滑脈または渋脈。
中医学的治療原則: 健脾燥湿、化痰止咳、理気活血、補気行血。
主な用薬: 半夏、蒼朮、白朮、黄耆、天南星、麻黄、茯苓、紫菀、百部、厚朴、桔梗、 魚腥草、薏仁、款冬花、陳皮、紫蘇子、前胡、白前、五味子、三七、 人参、桃仁、丹参、当帰尾、三稜、莪朮、王不留行、刘寄奴など。

C・肺気虚寒・肺陰虚型

中医学的臨床所見: 咳と共に水様の痰が多く出る。口が渇かない。息が短く浅い。目まい。 疲労感が強い。寒がり。咳声が低く小さい。寝汗をかく。食が細い。頻尿。軟便、下痢気味。胸がわずらい熱がこもる。手足が冷たい。 顔色が青白い。舌苔薄白。舌体が太く、赤い色を帯びている。沈細脈。
中医学的治療原則: 益気温陽、補気養陰、大補肺腎、止喘袪痰。
主な用薬: 人参、制附子、乾姜、胡桃仁、補骨脂、黄耆、沙参、肉桂、熟地黄、山薬、 蛤蚧、冬虫夏草、鹿角膠、阿膠、鱉甲、巴戟、淫羊藿、款冬花、紫菀、百部、半夏、陳皮、紫蘇子、五味子、山茱萸など。

D・陰陽両虚・脾腎倶虚型

中医学的臨床所見: 息切れがひどい。イライラする。頬が赤い。のどや口が渇く。
手足が冷たい。寝汗や油様な冷や汗をかく。全身がむくんでいる又は痩せている。ハッハッと息を吸う。横になりにくく上半身を起こしている。強い動悸。不安感が強い。大小便が少ない。舌体が赤く、唾液が少ない。舌苔が少ないあるいは無い。
沈虚脈、細数脈、虚細数、結脈や代脈。
中医学的治療原則: 回陽救脱、大補陰陽、峻補元気、納気定喘。
主な用薬: 制附子、乾姜、人参、黄耆、山薬、白朮、 丹参、巴戟、亀板、鹿茸、太子参、海馬、西洋参、何首烏、仙鶴草、蛤蚧、麻黄、冬虫夏草、五味子、紫河車、 精気神源丸、肉桂、麥門冬、淫羊藿など。

<生命力を高めて病気を治そう>

中医学では、人間の体全体をひとつの有機体ととらえ、人体を一本の大木に例え、 その木を一番良い状態にしてできるだけ元気に長生きさせていくように考えていきます。
中医学が、原因不明の疾患や治療法がないと言われる難病、慢性病の治療を得意とする理由は、 体全体の陰陽のバランスの崩れ(病因)を診ると共に、刻々と変化していく病状の変化などに きめ細かく対処することによって、生まれつき備わっている生命力、免疫力、治癒力を高めて 病気と対面していこうとする医学だからです。
正しく陰陽のバランスの崩れ『証(しょう)』を見極め、生薬を組み合わせた漢方薬の服用に よって、足りないものを補い、要らないものを捨て去り、気血水の流れを整えるとともに、病 気の原因になっている悪い生活習慣を改善していくと、弱っていた大木がじわじわと生命力を 取り戻し、大地の栄養を吸い上げ、太陽の光を吸収し、若葉をつけ、元気を取り戻していきます。
病気を治していくのは、生まれつき人間に備わっている自然治癒力であり、漢方薬はその力を 高める手助けをするのです。
よって、一見、関係もないような胃腸と頭髪、肺と大腸などが実は密接な関係にあったりして、 胃腸の治療をしていたらハゲが治った、じんましんの体質改善の治療中に生理不順が治り赤ち ゃんに恵まれた、自律神経障害の治療をしているうちに視力が良くなった、長年の便秘が治る と同時に喘息が改善されていたなどといった症例が実際たくさんあります。
また、中医学では昔から、現代の最先端医療技術をもってしても捉えることの出来ないものの 存在を認め、医学理論として確立し、さまざまな難病・奇病の治療に実績をあげてきました。 例えば、『心身一如』『五臓六腑』『気血水』などの概念がそれに当たります。
さらに精神面では『七情内傷(しちじょうないしょう)』という概念もあります。
七情とは、喜び、怒り、憂い、思い悩み、悲しみ、恐れ、驚き、の七種で、いずれも人間の自 然な感情ですが、これらの感情が長期間続くことによって体の調子が崩れ病気になる、すなわ ち「七情が体の内部を傷つける」と言う理論が昔から医学として確立されています。
七情は五臓六腑との関係が深く、情緒や感情も病気を引き起こす大きな原因なのですが、現代 のストレス社会では、心と体が密接に関係していることを日々実感している方も多いでしょう。 漢方治療では、その人の自覚症状などを分析して臓腑や気血水のバランスの崩れを整えながらス トレスに弱い部分も補強していきます。

<病態の把握>

呼吸困難度の指数(H-J・1~5度)によって、自分の症状がどの段階にあるのか、
どのような状態なのかを大まかに知り、病態を把握することができます。
H-J 1度 通常の生活では異常な息切れは感じない。
病態:
肺線維症(IPF)に進行していない、あるいは25%以内の程度。
H-J 2 階段を上る程度の運動で息切れする。
病態:
間質性肺炎(IIP)がある程度進行している、あるいは、肺線維症(IPF)が
30~40%進行している。心臓異常や他の全身性疾患を併発している場合もある。
H-J 3 健常者と同行の平地歩行で息切れする。
病態:
慢性的、数年にわたって進行中。肺線維化(IPF)は40~50%に進行している。
酸素吸入治療が必要になってくる段階。
H-J 4 通常の室内生活で息切れする。
病態:
慢性的に肺線維化(IPF)が50~60%に進行している。酸素治療が必要で、吸入は約1~2リットル・分。
H-J 5 安静時にも息切れする。
病態:
急性増悪があったケースが多く、長年にわたって間質性肺炎(IIP)が進行し、肺線維化(IPF)が
60%以上に進んでいる。酸素吸入なしでは日常生活が困難。