私はある間質性肺炎の患者さんとの出会いをきっかけに、中医学による特発性間質性肺(IIP)の治療に本格的に取り組むようになりました。
間質性肺炎(UIP)及び特発性間質性肺炎(IIP)、肺線維症(IPF)などの病名は、二十世紀半ば頃に西洋医学者によって命名された病名で、
新しい病気ではなく、古の人々が既に患っていた病気です。その証拠に、数千年前の中医学(漢方医学)文献には、これらの肺疾患に酷似した
病気の治療例が数多く遺されています。
*各朝を代表する医学著作中に肺疾患に関する治療の篇章(一部)を【中国医学の過去と展望】の
文末に紹介いたしました。
西洋医学においては未だ治療法が確立されていないと言われているこの肺疾患の治療例を、歴史の長い中医学の中で探し求め、
多くの文献を紐解いていく中で、現在の間質性肺炎の諸症状に酷似した肺疾患の治療例や、間質性肺炎を含む様々なタイプの
肺疾患に関する数多くの貴重な治療実績が残されていることを改めて確認していきました。
そして、いろいろな症例をつぶさに診ていくうちに、特発性間質性肺炎(IIP)及び肺線維症(IPF)の病位は主に肺にありますが、
その複雑かつ不明な病因、病程、病勢、及び転帰は病程の進行につれて脾(消化系)・腎(免疫力・体力・治癒力)が侵され体が
弱っていくという、中医学上の咳嗽、喘病、哮病、肺脹、肺痿などの複合病だと考えるに至りました。
周知のとおり、特発性間質性肺炎(IIP)による特発性肺線維症(IPF)は、進行性の難病(特定疾患)で日本での発病率は10万人に
7〜10人と言われる稀な疾患であり、予後不良の傾向が強く(発病後の5年以上の生存率は30%以下とも言われている)、未だ決定的な
治療薬が確立していません。
現在の西洋薬での単独治療では、肺線維症(IPF)の緩解、つまり肺の線維化、肺胞の硬化、蜂巣化の進行を抑制することが難しく、
また特発性間質性肺炎から生じる息苦しさ、乾性咳、稠痰、熱、全身の倦怠感や体重減少などの諸症状を改善する療効も乏しいのが
現状です。
また患者さん一人一人の諸症状や背景因子は十人十色で二人として同じ方はおられませんので、均一性、普遍性に限定される
西洋薬での治療では対応が難しく、ステロイド剤(プレドニゾロン等)、免疫抑制剤、あるいはインターフェロンγの薬物治
療効果には限界がある上、その副作用(ステロイド性糖尿病、骨質疏そう症など)の心配も残されています。
また分類上も多岐的で確定診断まで時間がかかり、ステロイド剤や免疫抑制剤による薬効と副作用のバランスの問題もあり、
進行性の疾患であるにも関わらず、無治療で経過観察中のまま不安な日々を過ごしている方が数多くおられます。
一方、中医学(漢方)上の治療法は、患者さん一人一人の臨床上の諸症状(週ごとに提出して頂く「症状報告書」)を基に、 症状の変化、治療過程、年齢、性別、併発している疾患、体力、気候なども考慮しながら、中医学『辨証論治法』によって、 きめ細やかに処方を調整しながら治療に当たることが出来ます。(通常は2週間ごとに処方を変えていきます)
当診療所に来られる方は、既に西洋医の確定診断・治療(経過観察・対処療法も含む)を受けており、中でも原因不明の
特発性肺線維症(IPF)が最も多く(現時点で8割以上)、亜急性間質性肺炎(BOOP)、膠原性間質性肺炎、及び慢性型過
敏性肺臓炎の方もおられますが、これまでの研究や、数々の臨床経験による辨証論治法で配合した自然生薬を組み合わせた
処方により着実に治療効果を上げております。初期の段階で本格的な漢方治療を行えば、進行の停止や延遅は十分可能で
あり、予後も良い結果が出ています。
各患者さんの刻々と変化する諸症状に合わせて生薬を巧みに組み合わせることの出来る東洋医理、自然生薬の多種多様性、
複雑な薬理性、広効性、安全性を特徴とする中医学による特発性間質性肺炎(IIP)の治療が実質的に可能になったのは
ないかと考えています。
*一部、【患者さんの声】に掲載中。
現在のところ、中医学と西洋医学を併用した治療報告文献、或いは純漢方治療の臨床例はまだ少ないですが、すでに治療実績
のある中医学を復活させると共に、現在も日々進歩し続けている中医学と現代西洋医学の優れた検査手段を併用した治療方法
が最善の選択肢であると確信しています。
また、中医学は、近年になって世界から注目され(特に欧米)研究が急速に進んでいますので、両医学の特性を生かした
「中西結合治療法」が最善最適の治療法として世界の主流となる日もそう遠くないでしょう。
|